「多重比較での第一種過誤の増幅」

前回(12月20日)の講義で,多重比較で何の処置も施さなければ「第一種過誤(type-1 error)」が増幅する理由について説明しました.その際,確率計算の過程の説明が不十分で,その点に関しての質問が出されました.下記はその点についての補足です.

処理平均に関する対比較の危険率(type-1 error)がαであるとき,その検定で結論を誤らない確率は1−αとなります.このような対比較を独立にN回繰り返すと,すべての対比較で結論を誤らない確率は(1−α)Nですから,その余事象を考えると,「いずれかの対比較で誤る確率」は1−(1−α)Nとなります.したがって,αが十分に小さければ,近似的に1−(1−α)N≒1−(1−Nα)=Nαが成り立ちます.

したがって,対比較の回数Nが大きくなるほど,いずれかでまちがいを犯す確率が大きくなるということです.